線維筋痛症の「臨床環境医学」による治療

1)線維筋痛症は数年前から200万人の患者がいるとされていますが、完治する患者が多くないことを観れば、その後増加が続いていると考えるのが妥当だと思います。                                      線維筋痛症の原因は不明であり、したがって治療は薬物による対症療法が中心になっていますが、まだ確実に有効な薬はないというのが現在の状況だと思っています。有効なことが比較的多いとされる抗鬱剤や鎮痛剤などの薬物によって改善することがあると報告されていますが、「運の善し悪し」と言えるレベルで、効果のあるものとないものの間にどのような差があるのかは明らかではありません。またたとえ有効な場合でも、薬から解放されることは少ないようです。                                       私は「食物アレルギー」からはじめて、化学物質過敏症、カンジダを中心とするイーストコネクション、電磁波過敏症などに手を広げて、多くの病気に関わってきました。そして原因食物を除く「除去食療法」を中心とした原因療法を続けてきて、多くの病気の多くの患者で効果を確認してきました。その患者さんの中にはいろいろな疼痛の方も含まれていて、病名を知らないままに線維筋痛症の治療もしていました。そのことに気がついたのは9年前医学雑誌で線維筋痛症の総説に出会ったときでした。そしてその後すぐにこのこの病気の治療医として登録されることになり、100名を大きく超得る患者さんの治療を引き受けてきました。

2)治療の内容は                                           ①これまでの経験から、どのような症状・病気でも、その原因に関わっているもので最も多いのは食物です。風邪のひきやすさ、頭痛、肩こり、下痢、めまい、湿疹、喘息、じんましんなど日常的な症状・病気の多くがそうです。線維筋痛症も例外ではなく、経験した100例を超える患者さんではほぼ例外なく食物が原因に絡んでいました。食物に原因を探し出し、その原因食物を除去するなどの対策をとるだけで症状が消失して、鎮痛剤などが不要になることが少なからずあるのです。ただし、原因食物はしばしば変動しますから、突然症状が再発することがありますから、その時に食べた物を記録しておいていただき、受信時に食物の再点検をして(受診のたびに重要な食物は必ず再確認をしています)、治療内容の修正をします。それで効果が不十分なら、                                                  ②化学物質、電磁波、布や紙など、日ごろ接触することが多いその他の環境物質の中にも原因が隠れていないかを点検し、見つかったら対策をとります。ただし化学物質や電磁波に対する対策はどうしても不徹底にならざるを得ませんから、短時間で効果の出ることが期待できないことが多いのです。しかし、「比較的に徹底が可能な除去食治療を継続していると、多分免疫、内分泌、自律神経、酵素系などの機能が回復してくるのでしょう、化学物質や電磁波などに対する耐性が大きくなって、改善が進むものです。                   ③同時にこれまで「食物アレルギー」に対して、経験的に安全で有効とみなしてきたビタミンと乳酸菌製剤および消化剤を処方します。また疼痛その他の症状に対しても必要に応じて、オーリングテストで個別的に有効だと判定される薬を処方して、対症療法を行いますが、上記したように治療が進むとこれらの薬も不要になっていきます。                                            原因物質の診断、有効な薬の選択に使用しているオーリングテストは、大村恵昭博士が発明し、1993年に米国特許を取得(ネットによる)した技術で、正式にはバイ・ディジタル O-リング テスト(略してBDORT)といいます。約20年間使用していますが、その判定通りの食物、薬の選択で確実に有効なことを経験し確認してきました。アトピー性皮膚炎でも気管支喘息でもうつ病や統合失調症でも効果を認めめてきたこのような治療で、線維筋痛症でもほぼ確実に効果を認め、多くの例で薬からの離脱があり、また食物に対する反応も少なくなっています。BDORTについては『新しいアレルギー講座』に若干詳しく述べてありますので参考にしてください。またインターネットで検索すると多くのことが書かれています。

3)このようなこれまでの治療経験に基づいて線維筋痛症について以下のように考えています。                                               ①何らかの原因によって発病の引き金が引かれる。その引き金には注射や採血、手術、外傷、打撲、強いストレッサーなどいろいろなものが挙げられています。                                            ②発病後は引き金が何かに関わりなく、症状の持続・増悪などに、食物その他の環境物質の、アレルギー、過敏反応、不適合などと呼ぶしかない機序が働いて、症状の持続・増悪の原因になって、慢性の状態を作り上げている。したがってそれら原因になっている環境物質との接触を断つことによって改善が進むことになるのでしょう。                                       ③その回復の機序については、環境物質の作用によって傷害されていた、生体の恒常性(ホメオスターシス)維持機能―免疫系、内分泌系、自律神経系、それに酵素系―が、傷害持続の原因になっていた物質から解放されて、その本来の機能を回復するのだと考えています。ただし、その傷害と回復を示す恒常性維持機能の変化に関するデータはとれていません。その機序をどう考えるかは別にして、科学的データをとることによって、このような治療が有効性を示す客観的事実が得られると考えています。

長年実践してきたこのような治療の具体的な内容を拙著に書いたのですが(「原因不明の疾患とアレルギーの新療法」(芽ばえ社、2012年)、この2年余りの間に、その原因は分かりませんが、食物の反応の状況が大きく変化し、したがって食物への対処方法も大きく変更することになっています。このような変化は過去にも起きてきたことで、今後もしばしば変化が起こると考えています。その変化の原因についても研究が必要ですが、私のような小さな診療所の臨床医の手には負い難いと感じています。しかし変化のたびに有効な治療方法は工夫してこられたからこそ、線維筋痛症の治療も可能になったのだと思っています。このことに関しては「新しいアレルギー講座」の方で述べるつもりです。

4)ところで、この数年日本でも外国でも子宮頚がんワクチンの接種後に、多彩で重篤な全身性の症状を示す被害者が多発しています。最近このような病態について、西岡久寿樹線維筋痛症学会の理事長が「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と命名していますが、線維筋痛症との類似性が指摘されています。今年になってお二人の患者さんを診させていただきました。その結果分かったことは、BDORTで検査とその他の検査をし、診察した限りでは、線維筋痛症、アトピー性皮膚炎、不定愁訴などの患者さんと同じ「食物不適合」があり、これらの患者さんが改善している「除去食治療」で治療が可能だと思われました。1か月余りが過ぎていますが、残念ながら今のところ明確な改善は見られていません。線維筋痛症でも治療開始後改善がみられるまでに時間には長短があり、重症なほど症状の軽減までに時間がかかるものと考えています。また、食物以外の環境物質の影響も、線維筋痛症などよりも大きい可能性も考えなければならないと思います。改善の可能性が見えてきましたら報告したいと考えています。すべてに有効でなくても効果のある人いるはずだと感じますので、市川市近辺にHANSの方がいらしたら、診療させていただきたいと願っています。市川市民診療所(tel047-376-2788)に予約下されば精一杯の診療にあたらせていただきます。

5)『新しいアレルギー講座』の7)、8)に、昨年の末ごろからはっきりしてきた過去に経験のない理解しがたい現象が起きていることを述べましたが、このような新たな現象と、これに対するこれまた新たな治療方法を始めてから、初めての線維筋痛症(FM)の方が受診されました。この新たな治療を始めてから、これまで治療に抵抗していた何人かの患者さんが、これまでに比べて改善が進んだと感じていました。その理由として原因になっていながら気がつかずに対策から漏れていた食物に対して、今の治療方法が知らず知らずのうちに対策となっているからではないかと思っていました。そして最初からこの方法で治療を始めた新たなFM患者さんみ、4週間で目に見えて疼痛が軽くなるという早い効果を経験しました。まだ今後を観察しなければ確かなことは言えませんが、アトピーにしろFMにしろ、原因食物を漏れなく除くことができるなら、これまで以上に効果を得られるのではないかと期待し始めたところです。

6)線維筋痛症(FM)に2年以上触れないで過ごしてしまいました。この間に『不適合(アレルギーやアレルギーと同様の症状を引き起こすが、アレルギーではそのメカニズムを説明できない「過敏症」のすべてを包含する)』な食物の範囲が変化し、それに対応してその食物を『適合化』する方法に改善修正を何度も加えて、何とか対処できています。「環境物質はすべてが心身に悪影響を与えて病気を作り出すと見える一方、そのような悪影響を打ち消す力が、同じ環境物質の中に隠されているということもまた確かだと感じざるを得ない」というのが、過去の経験、体験からの結論になると考えています。FMの治療に取り組んで12年になると思いますが、この間の変化は結果として原因食物を漏れなく把握できることになって、原因療法がより厳密にできるようになったと感じます。かつて効果が不十分で治療を諦められていた方にも、より有効な治療が可能になっていると思います。この2年間でうれしかったことの一つは,FM患者さんが入院し、疼痛を再発しながら無事に出産されたことです。退院後食餌療法の再開で、すぐ疼痛が消失したのでホッとしたことは忘れられないことになると感じています。そしてこの事実は,『食物不適合』が明らかにFMの原因の一つであるという重要なことを示したと考えます。


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